へ人形系統のだし[#「だし」に傍線]人形は、祭りに臨む神を迎へて、服従を誓ふ精霊の形の変化ではあるが、此が逆に、祭礼に来臨する神其ものゝ形にもなるのである。同じ事は、虫送りの人形に於ても言へる。或は、ひな祭りの人形に於ても言へるのだ。
六 虫送り人形
虫送りの人形は、多く禾本科《クワホンクワ》の植物を束《タバ》ねたもので作るのだから、畢竟|藁人形《ワラニンギヤウ》であるが、此に於ても、やはり手を問題にして、足を言はない。足はたゞ、胴の延長であるに過ぎない。此手は、或は進歩して、離宮八幡の青農のやうに、二つながら動くものが出来て居たかも知れないが、多くは、拡げたまゝのものである。此ははたもの[#「はたもの」に傍線]の形であつて、古代の信仰に於ては、磔刑《タクケイ》の形式と、共通して居る。雄略紀に見えて居る百済《クダラ》の池津媛《イケツヒメ》、並びに其対手の男を、姦淫の罪によつて、仮※[#「广+技」、第4水準2−12−4]《サズキ》――後世の櫓《ヤグラ》の類――の上にはたもの[#「はたもの」に傍線]とした、など言ふ記事から見ると、罪によつて罰せられると言ふ事は、同時に、神のも
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