鏡花との一夕
折口信夫

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)朝端《アサハナ》から

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)よく/\の
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

他人にはないことか知らん。――私には、あんまり其があつて、あり過ぎて困つた癖だと、始中終それを気にして来た。聞いては見ぬが、大勢の中には、きつと同じ習慣を持つて居ながら、よく/\の場合の外、其に出くはさずじまひになる人が、可なりの人数はあるはずだと思ふ。
歩き睡りと言ふ、あれである。気をつけて居ると、大通りなどでも、どうかすると、ずつと道ばたに寄つて、こくり/\と頭をふらつかし乍ら行く子どもなどを見かけぬ訣でもない。
実は大分久しく、その習慣に遠のいて居た私だが、をとゝしの末に幾年ぶりかに行きあうて、其から暫らく、此が続いたので、どうも全く夜道などは、弱つてしまつたことだつた。
[#ここから2字下げ]
老いづけば、人を頼みて暮すなり。たゝかひ国をゆすれる時に
[#
次へ
全8ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング