同様、高い処から、地上の人をとり去らうとする火車《クワシヤ》なる飛行する妖怪と、古猫の化けたのとの関係をも説かれた。
[#「寛永年中豐後國肥田ニテ所獲水虎寫眞…」のキャプション付きの河童の図(fig18395_06.png)入る]
其後、南方熊楠翁は、紀州日高で、河童をかしやんぼ[#「かしやんぼ」に傍点]と言ふ理由を、火車の聯想だ、と決定せられた。思ふに、生人・死人をとり喰はうとする者を、すべてくわしや[#「くわしや」に傍点]と称へた事があつたらしい。火車の姿を、猫の様に描いた本もある訣である。人を殺し、墓を掘り起す狼の如きも、火車一類として、猫化け同様の話を伝へてゐる。老女に化けて、留守を家に籠る子どもをおびき出して喰ふ話は、日本にもある。又、今昔物語以来、幾変形を経た弥三郎といふ猟師の母が、狼の心になつて、息子を出先の山で待ち伏せて喰はうとして、却て切られた越後の話などが其である。さう言ふ人喰ひの妖怪の災ひを除く必要は、特に、葬式・墓掘りの際にあつた。坊さんの知識から、火車なる語の出た順序は考へられる。江戸中期までの色町に行はれたくわしや[#「くわしや」に傍点]なる語は、用法がいろ
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