、時としては六句に及ぶ詩に於て、短歌の次の形を発生させようと試みて居る。私はその点に於て、臆病でもあり、古典に準拠もしている。さて、純ならびに私の作について感じ得たことは、口語律が、真の生きた命のままに用いられる喜びである。其から更に、近代生活をも、論理をも、叙事味の勝った気分に乗せて出すことが出来ることなのである。三十一字形の短歌は、おおよそは円寂《えんじゃく》の時に達している。祖先以来の久しい生活の伴奏者を失う前に、我々は出来るだけ味い尽して置きたい。或は残るかも知れないと思われるのは、芸術的の生命を失うた、旧派の短歌であろう。私どもにとっては、忌むべき寂しい議論であったけれども、何としよう。是非がない。
底本:「昭和文学全集 第4巻」小学館
1989(平成元)年4月1日初版第1刷発行
1994(平成5)年9月10日初版第2刷発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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