歌の円寂する時
折口信夫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)竟《つひ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)所謂|鍛煉道《たんれんどう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)太※[#「虍/丘」、第3水準1−91−45]集
[#(…)]:訓点送り仮名
(例)手持[#(ノ)]女王
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[#ここから2字下げ]
われさへや 竟《つひ》に来ざらむ。とし月のいやさかりゆく おくつきどころ
[#ここで字下げ終わり]
ことしは寂しい春であった。目のせいか、桜の花が殊に潤《うる》んで見えた。ひき続いては出遅れた若葉が長い事かじけ色をしていた。畏友《いゆう》島木赤彦を、湖に臨む山墓に葬ったのは、そうした木々に掩《おお》われた山際の空の、あかるく澄んだ日である。私は、それから「下《しも》の諏訪」へ下る途《みち》すがら、ふさぎの虫のかかって来るのを、却《しりぞ》けかねて居た。一段落だ。はなやかであった万葉復興の時勢が、ここに来て向きを換えるのではないか
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