、其もどき役[#「もどき役」に傍線]の方に黒面を残したものと見られるのです。
此黒面は、私は山人のしるし[#「しるし」に傍線]だと思ふのであります。譬へば、踏歌節会の高巾子《カウコンジ》のことほぎ[#「ことほぎ」に傍線]一行の顔は、正しくはのっぺらぽう[#「のっぺらぽう」に傍点]の物だつたらしいのです。即、安摩《アマ》・蘇利古《ソリコ》に近いものだつたのです。白式尉が採桑老らしくなると共に、山人面も次第に変化して、其を唯黒くしたゞけが違ふ尉面と言ふやうになつたのでありませう。古代の山人の顔は、今から知るよしもありませんが、黒といふ点では一致して居ても、黒式尉のやうな、顔面筋まで表した細やかな彫刻ではなかつたはずです。
併し、ちよつと申して置きました様に、黒といふ語が、我が国では、一種異様な舞踊の保持団体と関係のありさうなのは事実です。黒山舞の昔から、黒川能・黒倉田楽・黒平三番叟など皆山中の芸能村なのです。此等のくろ[#「くろ」に傍線]は顔面の黒色を意味するものか、其とも、技芸の正雑を別つ上の用語か、今の処断言はいたしかねるのですが、何にしても「山人舞」と深い関係は考へられようと思ひます
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