原義は、後世の神人に近いので、神聖の資格をもつて現れるものゝ義である、と思ひます。顕宗紀の室寿詞は「我が常世《トコヨ》たち」の文句を結んでゐます。此は、正客なる年高人《トシタカビト》を讃頌した語なのです。常世の国人といふことから、常世の国から来る寿命の長い人、唯の此世の長生の人と言ふ義になつて来たのです。
日本人は、常世人は、海の彼方の他界から来る、と考へてゐました。初めは、初春に来るものと信じられてゐたのが、後は度々来るものと考へる様になりました。春祭りと刈上げ祭りは、前夜から翌朝まで引き続いて行はれたものでした。其中間に、今一つあつたのが冬祭りです。ふゆまつり[#「ふゆまつり」に傍線]は鎮魂式であります。あき[#「あき」に傍線]・ふゆ[#「ふゆ」に傍線]・はる[#「はる」に傍線]が暦法の上の秋・冬・春に宛てられるやうになると、其祭りも分れて行はれる。其祭りの度毎に、常世人が来臨して、禊ぎや鎮魂を行うて行く。かうなると又、臨時の祭りが、限りなく殖えて来ました。
田植ゑ祭りに臨むさつきの神々[#「さつきの神々」に傍線]なども迎へられ、季節々々の交叉期《ユキアヒ》祭りには、邪気退散の呪法
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