と言はれるまでに、其旅行器が、国々の人の目に止る機会が多かつたのです。其程浮浪の布教生活を続けたのです。山人も、ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]の一派であり、――傀儡子女《クヾツメ》は、海人の岐れであるらしい。――其が山舞をする事で、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]から分類せられ、海人からくゞつ[#「くゞつ」に傍線]の生活を棄てゝ、山舞をする様になつても尚、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]と称せられたのは、遊女はくゞつ[#「くゞつ」に傍線]とし、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]を祝言乞食者と考へた為でありませう。
九 山伏し
山舞を伝承して居る村の中には、思ひの外に深い山中に住んだ者が多かつたのです。そして歳暮・初春其他の行事に、村里へ降つて、山のことほぎ[#「山のことほぎ」に傍線]を行ひに来ます。此が「隠れ里」の伝説の起原であつて、さうした生活法を受けつぐ事に、不思議も、屈托も感じない者が多かつたのです。隠れ里と称する人居は、皆山人としての祝言職を持つて居たのです。此山人の中、飛鳥末から奈良初めへかけて、民間に行はれた道教式作法と、仏教風の教義の断篇を知つて、変態な神道を、まづ開い
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