養はれて、末には英雄神となる物語を語つたのが、ほたかの本地[#「ほたかの本地」に傍線]として、末代の正本には、物臭太郎と言ふ流離の貴族の立身譚に変化して行きました。信濃に、安曇氏を称する海人部の入つたのは、かうした径路を通つたのでありませう。
山のことほぎ[#「山のことほぎ」に傍線]・海のほかひ[#「海のほかひ」に傍線]が段々合体して来ても、名目はさすがに存してゐました。山人の団体として、遊行神人の生活法をとつた者は、ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]であり、海人の巡遊伶人団は、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]と言うたらしいのです。其が後には、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]がくゞつ[#「くゞつ」に傍線]と称し、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]にしてほかひ[#「ほかひ」に傍線]と言はれたらしい混乱が見えます。ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]の持つ物容れは、山の木のまげ物であつて、其旅行器をほかひ[#「ほかひ」に傍線]と称へました。くゞつ[#「くゞつ」に傍線]は恐らく、呪詞の神こゝとむすび[#「こゝとむすび」に傍線]の名に関係があるらしく、其携へた、草を編んだ物容れの名が、くゞつ[#「くゞつ」に傍線]
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