ヘ》・山桑《ツミ》などの類に、時代による交替があるのでせう。
柳田先生の杓子の研究を、此方に借用して考へると、此亦、山人の鎮魂の為の木ひさご[#「木ひさご」に傍線]でした。神代記のくひさもちの神[#「くひさもちの神」に傍線]は、なり瓢の神でなく、木を刳つた、古代の木杓子《クヒサ》の霊の名であつた、と言はれませう。此、くひさ[#「くひさ」に傍線]と言はれたと思はれる杓子は、いつ頃からの山づとかは知れませぬが、存外、古代からあつたものらしいのです。かうした山人は、初春の前夜のふゆまつり[#「ふゆまつり」に傍線]の行事なる、鎮魂式の夜に来ます。即、厳冬に来たのです。若宮祭りの翁の意義が、其処に窺はれる様に思はれます。
若宮祭りの翁は、高い神――続教訓抄など――と言ふより、ことほぎ[#「ことほぎ」に傍線]の山の神で、春日の社殿及び若宮の神の鎮魂を行ふところに、古義があつたのでせう。夜叉神のことほぎ[#「ことほぎ」に傍線]や、菩薩練道が寺に行はれたのも、高位の者に誓ふ風からです。社の神にも誓ひ[#「誓ひ」に傍線]・いはひ[#「いはひ」に傍線]に、ことほぎの翁[#「ことほぎの翁」に傍線]が参上する
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