り住んで、卜部の部曲が拡がります。宮廷の海語部は、後には、卜部の陰に隠れて顕れなくなり、卜部の名で海語部の行うた鎮護《イハヒ》のことほぎ[#「ことほぎ」に傍線]を言ひ立てる様になりました。此卜部が、陰陽寮にも勢力を及ぼしました。踏歌の節の夜の異装行列は、元、卜部の海語部としての部分を行うたものらしく、群行神の形であつて、作法は、山人の影響を受けたものです。服従の誠意を示しに、主上及び宮殿をいはふ言ひ立てに来るのであります。

     六 山づと

此|高巾子《カウコンジ》の異風行列は、山人でもなかつた。万葉集には、元正の行幸が添上郡の「山村」にあつた事と歌とを記してゐる。
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あしびきの山に行きけむ山人の 心も知らず。やまびとや、誰(舎人親王――万葉巻二十)
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仙人を訓じて、やまびと[#「やまびと」に傍線]とした時代に、山の神人の村なる「山村」の住民が、やはり、やまびと[#「やまびと」に傍線]であつた。此歌は、神仙なるやまびと[#「やまびと」に傍線]の身で、やまびと[#「やまびと」に傍線]に逢ひに行かれたと言ふ。其やまびと[#「やまびと」に
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