[#「子+盡」、311−1]愛護《コダカラアイゴ》の評判記の画で見ると、工藤とやはたの介――八幡三郎と田畑[#(ノ)]介と綟つたものか。工藤足軽八幡之介、実は、鬼王とある――が、愛護の君を桜木に吊り上げて、拷問して居る処がある。子役の持ち役として、愛護は、割合に閑却せられてゐたのかも知れぬ。或は愛護を殺した者を、梅若殺しの、忍の惣太風の細工[#(ノ)]小次郎として、後に髯[#(ノ)]意休|即《すなはち》えたと言ふ様な趣向で、臭い/\と言ふ助六の喝破の源流をなしたものかも知れぬ。
後の五郎の助六が、常に問題としてゐる友切丸は「愛護桜」では、刃《ヤイバ》の大刀《タチ》であつたものか。大阪出の古手屋八郎兵衛・紙屋治兵衛を銀猫おつま[#「おつま」に傍線]や、佃島心中などに捏ね上げ、其から逆に、古八・紙治迄も、江戸にも別に存在してゐた様に説く、通人考証家の多かつた江戸であるから、助六・意休などの類名のもでる[#「もでる」に傍線]実在説は、一切眉唾物である。
名歌勝鬨では、二条蔵人・古曾部庄司両家の確執、両家の宝を奪うて栄達を望む高階弾正、それに使はれる端敵、御嶽悪五郎があり、二条家の忠臣として田
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