畑早苗之助、古曾部家の旧臣荒木左衛門がある。其外愛護の恋人古曾部の娘があり、其兄で同時に、妹の恋人なる人と二組のろめお[#「ろめお」に傍線]・ぢゆりえつと[#「ぢゆりえつと」に傍線]がある。
愛護の家に仕へる女に、大津坂本猿堂守りの娘、穴生生れの猿の扱ひ方を知つた常夜《トコヨ》と云ふ早苗之助の女房になる女がある。刃の大刀は二条家の宝物で、天の唐鞍は、古曾部家の重宝と、両家に分けてゐる。其外鞍打杢作などいふ人物もある。幾分細工の穴を示す者であらう。
常夜の親里穴生に、早苗之助・常夜が住んで、早苗が帥[#(ノ)]阿闍梨を訪ねて叡山に登つた後に、愛護が桃を盗んだとて追うて来るのが、小兵衛・九助といふ百姓になつて居る。常夜は、此を助ける為に、狐憑きの身ぶりで、
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指もさゝば怨み葛の葉、今にしのだに怨みの言葉。小兵衛聞け。麻は蒔くとも苧《ヲ》になるな。穴生の里の九助怨し。……桃故命捨つるかや。我は死すとも、此桃の花は咲くとも、実はなるな。穴生の里のあらむ限りは、と怨み喞ちし言の葉の木にも心のあるならむ。
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とある。其外、手白の猿を、恋人から若に贈る件
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