寺門の交渉を背景としてゐるのに、此は三井寺には無関係なこと(を)
[#ここで字下げ終わり]
などである。長物語は全く、智証門徒なる南谷の慶祚と、西谷の座主良真との関係(厳神抄)に、脚色を加へたものであらう。其上、隅田川の梅若と比べると(い)(へ)(と)並びにさすらひ[#「さすらひ」に傍線](わ)の四点は類似して居り、細工と人買ひとが、幾分同じ傾向の役廻りに在る事を感ぜしめるに過ぎぬ。
此伝説は、鎌倉の初めから室町に到つて完成した継子虐待物語――落窪物語は疑ひもなく鎌倉初期の作――(ぬ)と、室町から江戸の初め迄勢力のあつた本地物語(る)との上に、やはり室町に芽ざして、江戸に入つて多様な発達を遂げた殉死、寧心中物語(を)と、室町に著しくなつた若干の児物語(か)とを加へて経としてゐるから、此伝説の主要部は、徳川初期には既に、出来上つてゐたもの、と見てよからう。処が「長物語」の様な創作に比べると、却つて非常に古い種を蔵してゐるのも、不思議である。
其は、大宮権現の由緒と融合したうけひ[#「うけひ」に傍線](ち)と、貴人流離(か)の二つの形式が見える事である。日吉大宮の鎮座次第は、沢山の書物が繁
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