方の目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]らせた処から、指し物にばれん[#「ばれん」に傍線]と言ふ一類が、岐れ出たものと思はれる。
一体ばれん[#「ばれん」に傍線]は、後に変化を遂げた形から類推して、葉蘭《バラン》の形だとする説もある様であるが、此は疑ひなく、ばりん[#「ばりん」に傍線]である。ねぢあやめ[#「ねぢあやめ」に傍線]とも言ふ鳶尾草《イチハツ》に似た馬藺《バリン》を形つた金具のだし[#「だし」に傍線]をつけたからの名であらう。棕梠の紋所との形似を思はせる此だし[#「だし」に傍線]は「輪貫《ワヌ》き」を中心にして、風車の様に、四方へ丸形に拡つて居る。唐冠兜の後立て[#「後立て」に傍線]も、此と一類の物であらう。前にも述べた通り、神事のさし物[#「さし物」に傍線]には、薄の外に荻・かりやす[#「かりやす」に傍線]をも用ゐるから、植物学的の分類に疎かつた古人が、菰・菖蒲・鳶尾草などを同類と見て、戦場の笠じるし[#「笠じるし」に傍線]・さし物[#「さし物」に傍線]にも用ゐた名残りだといふ事も出来よう。
ばれん[#「ばれん」に傍線]のだし[#「だし」に傍線]をつけたまとい[#
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