まじなひの一方面
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)命《ナヅ》く

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まじなひ[#「まじなひ」に傍線]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ちよい/\
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まじなひ[#「まじなひ」に傍線]殊に、民間療法と言はれてゐるものゝ中には、一種讐討ち療法とでも、命《ナヅ》くべきものがある様である。蝮に咬まれた時は、即座に、其蝮を引き裂いて、なすりつけて置きさへすればよいとか、蜂をむしつて、螫された処に擦り込んで置かなくてはならぬ、など言ふのが、其である。
幼い心を持つてゐた昔の人にとつては、人を悩し苦める毒を、身内に蓄へてゐる毒虫などが、どうして、自身其毒にあたらぬだらうと言ふことは、可なりむづかしい疑問であつたに違ひない。其にはきつと、其毒を消すに足るだけの要素を同時に、一つからだに具へてゐるに違ひない、と解釈するより外に、為方はなかつた事と思ふ。
ばちぇら[#「ばちぇら」に傍線]氏の下女であつたあいぬ[#「あいぬ」に傍線]が、主人が畑から南瓜の双子をとつ
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