て来て、食べようとしてゐるのを止めて、「さういふ畸形のなり物[#「なり物」に傍線]を食べるには必、片方食べてはならぬと言ひます。両方とも喰べてしまはねば、祟りを受けます。前半の祟りは、後半が祓ふことになつて居るのですから」と言うた(あいぬ人及其説話)話は、やはり、蝮や蜂の場合と、同じ考へを語つてゐるのであつた。「毒喰はゞ皿まで」など言ふ、粗大な諺の源も、或はこんな処に、存外なひつ懸りを持つてゐるのかも知れぬ。一方、われとわが身内《ミウチ》の毒の鬱積に苦しんで、毒蛇などが、人の救ひを受けたと言ふ形の話も、ちよい/\見える。かういふまじなひ[#「まじなひ」に傍線]の出来た、一面の理由を語るものである。
今日まじなひ[#「まじなひ」に傍線]と言ふ語に、おしなべて括んで居る事がらも、実は、其分類に不適当なものを雑へてゐる。一体此語は、不合理と言はぬ迄も、われ/\の思惟を超越した結果を、必然的に喚び起す意味であるから、正当な除去の方法とは、人皆考へてゐぬのである。喰ひ合せをこはがるのと似た、先人の経験に対する、漠然とした信用と見てよからう。而も、祈祷や医薬の中に籠るべきものまで雑つてゐるのが、後
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