の健康を祝福したのであつた。これを、死者にする聖霊会と分つ為、十三日以前に行ふ事にしてゐた。盆礼の古い姿である。親・親方・主人の為にしたのが、殊には、族人の長上に向つて行ふ風が、目だつて見えた。
正式な形は、恐らく一人々々、ばら/\に出かけて、祝うて帰る、といつた風ではなく、定つた日に、長上の家に集つて、家主に向つて、一同から所謂、おめでた詞《ゴト》を述べたのであらう。正月ならば、てんでに、鏡餅を持つて据ゑに行く処を、多く、塩鯖を携へて行くやうに、手みやげの分化が、行はれてゐた。此鯖を捧げる極りは、未だに行はれてゐるやうであるが、元はかうした品物を、一般にさば[#「さば」に傍点]と称へてゐたのが、さば[#「さば」に傍点]ならば一層、さかな[#「さかな」に傍線]の鯖にした方が、言葉の上の祝福の効果も多からう、といふ考へから、いつか、さかな[#「さかな」に傍線]になつて行つたものと思ふ。実の処、年暦の改まる時に奉つたものは、魂であつたので、さば[#「さば」に傍点]――産飯《サバ》と書きなれてゐる所の――といふ語で表す様になつたのには、聯想の、他から加つて来たものと考へる。だから、此をも、た
前へ
次へ
全17ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング