島袋教諭の心入れに酬ゆる為、少し前に、ほんの数行手を入れたまゝで、校正も人任せで、郷土研究社の「山原《ヤンバル》の土俗」と言ふ、同教諭の採訪録の解説として、加へておいた。其をそのまゝ、所謂げら刷りとやらを、せき立てられて、大岡山の書物の原稿に渡した為、読み返す間がなかつた。ところがやつぱり、大しくじりの予感が具体化した。久高島で、川平さんと私との採訪して来た「ゐなぐめがなさば君のめで、ゐきがみがなさばしゆんぢやなしめで」といふ琉歌形の民謡について早く「琉球の宗教」時分に、伊波さんその他から、心切な注意を受けてゐたのであつた。其を同書のぬき刷りに書き込んで、安心してゐたが、全集本の方に書き入れずにゐた。解説のげら刷りの原本になつたのは、その本の方から、源七つあんの写してくれたものであつた。
そのまゝ失念してゐたが、本になつてから、しまうたと思うた。
[#ここから2字下げ]
首里主《スンヂヤナシ》愛《メ》で、君《キミ》の愛《メ》で
[#ここで字下げ終わり]
となつてゐる点である。
早速、小石川の伊波さんから、二度目に、国頭名護の源一郎さんから、心切な教示が来た。処が伊波さんの以前の手紙は、
前へ 次へ
全5ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング