。此点かしり[#「かしり」に傍線]とまじなひ[#「まじなひ」に傍線]との違ふ所である。尚一つ違ふ点は、庶物の精霊を術者が役すると言ふ所に在るらしい。
此等の語の代表語とも言ふべきのろふ[#「のろふ」は罫囲み]と言ふのは、平安朝の用語例で見ると、語根に既に呪咀の義がある様に思はせる「のろ/\し」など言ふ語がある。けれどものろふ[#「のろふ」に傍線]の分化した意義ばかりしか残らなかつた時代に、出来た新語の語根に、逆に呪咀の義を感ずる様になつてゐたと見るべきであらう。のろふ[#「のろふ」に傍線]がさうした分化を遂げるには、罵《ノ》る・叱《ノ》るなどの悪し様に言ふと言つた用語例が助けてゐる事であらう。まじなふ[#「まじなふ」に傍線]だけが少し違ふが、うけふ[#「うけふ」に傍線]以下皆一類の語で呪文が悪用せられて行く傾向を見せてゐる。同時に、「ほ」の出現を問題にせなくなつて来る。「ほむ」と「ほぐ」とに違ふ所があるとしたら、「ほむ」にはおだてる[#「おだてる」に傍線]意を持つて来てゐる事である。此点は、ねぐ[#「ねぐ」は罫囲み]も共通であつた。「ねぐ」の最初から願ふ義でなかつた事は、「ねぎらふ」の
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