たと言ふ伝へも、皆此系統である。「ほ」に就いての信仰生活が忘却せられた後に、唯ゆくりなく物の出現したと言ふ姿に固定したのだ。
ほ[#「ほ」は罫囲み]を語根とした動詞が、ほぐ[#「ほぐ」は罫囲み]であり、又ほむ[#「ほむ」は罫囲み]と言ふ形もある。ほぐが語根化して再活用すると、ほがふ[#「ほがふ」は罫囲み]となる。普通の用語例からつきつめてゆくと、「ほぐ」は優れた神が精霊に向うてする動作らしく思はれる。併し「ほ」と言ふ語から見れば、元庶物の精霊が「ほ」を出すと言ふ義であつたらしい。其が出させる方の動作に移して言はれる事になつて来る径路は考へ難くない。精霊の示す「ほ」を出させると言ふ方面から見れば、やはり「ほ」を出すと言ふ事になる。「ほ」の原義は知れないが、「うら」と似た筋路に立つ事を思へば、末《ウラ》・梢《ウラ》・表《ウラ》(うら<うれ)同様、秀《ホ》の義だとも言へる。表面・末端の義から、さうした出現形式に言ふのだと説けばわかる。秀《ホ》の意義なども、逆に「ほ」の影響を受けて、愈《いよいよ》著しく固つたらうと言ふ事も考へねばならぬ。精霊の「ほ」を現す事が、大きく見て常世神の動作に移して考
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