]の分化でありながら、それのつく[#「つく」に傍点]筈の連用形には続かずに、終止形(連体形)につく癖がある。
即此は言ふまでもなく、対話敬語(又、丁寧語)で、
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行きもうす > 行くもさ
為《シ》もうす > しもさ
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又、
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行きもうす を  行くのし(<行くなもし)
為《シ》もうす  を  するのし(<するなもし)
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かう言ふ風に連用形につかず、終止連体に続くものゝやうな傾向を示してゐることは、方言文法の飛躍法なのである。
近代の敬語は、対話敬語に犯されて、著しく敬語自身の領域を狭めてしまつてゐる。さうして、敬語と、対話敬語との中間の表現と謂つたものをすら感じて来てゐる。
その代表が、ます[#「ます」に傍点]であるが、決して本来の敬語ではない。勿論古代中世に用ゐられたいます[#「います」に傍点]系統の坐《マ》すではないことは明らかだ。が、時としては「狂言」などに、――殊に狂言に多く遣ふところから起る――ます[#「ます」に傍点](<まをす)の錯覚から古い敬語が残つてゐる感じのする例が、相応にある
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