とを示してゐる。東京から考へると、逆に奥州あたりからおし出して、這入つて来ようとしてゐるかの様にすら見える。併し事実さう言ふことは考へられない。が、さう言ふ見方からすれば、――近い所では新潟殊にその信濃境までも這入つて来て居り、奥羽の中特に南部地方に盛行する外、飛び地のあちこち[#「あちこち」に傍点]にあるすけ[#「すけ」に傍線]である。やはり分布の歴史からは、其が奥州を中心として、部分的に偏在し残つたものとは見られない。中央から撒布せられたその径路において、其々残存したことは固より、先々の地方々々で、其々音韻分化や、民間合理解などが加つたと言ふ――特殊な残り方をしたものと見られる。青森や、新潟の一部にあるしけ[#「しけ」に傍線]は、かうした姿を示すものと見るべきであらう。
とにかく、すけん[#「すけん」に傍線]一統の方言と、すけ[#「すけ」に傍線]・しけ[#「しけ」に傍線]の一流とは、語形組織に、ちつとも変つた所は見られない。あると言へば、唯一点、九州のは明らかに敬語が敬語――実は軽親語――として這入つて居り、その機能も完全である。越後・奥州のものは、敬語意識は勿論、特に其部分の意義
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