。けん[#「けん」に傍線]はけに[#「けに」に傍線]・からに[#「からに」に傍線](=から)で、基礎になつたものは、「から」(故)であり、「け」である。「あらつしやるから」「なさるから」に当るのが、「すけん」なので、まづす[#「す」に傍線]とけん[#「けん」に傍線]は必しも密著してはゐない。其でも、九州方言の傾向として、敬語でなくてもよい所にも、又敬語を要せぬものにも使ふ所から、軽卑な待遇法が出来てゐる。此は軽親語とでも言ふべきで、敬語式に用ゐた「行きある」「取りある」が、ユキヤル・トリヤルとなり、もつと近代方言風には、トリヨル・ユキヨルとなるやうな類である。だから其す[#「す」に傍線]は極めて微量な敬意を示し、話し口《クチ》の柔軟《ナド》やかなことの為に遣つてゐるやうにさへ見えるが、而もす[#「す」に傍線]は丁寧法即対話敬語となりきつてゐる訣ではない。けん[#「けん」に傍線]は正確に言へば、けに[#「けに」に傍線]であつて、此二つは並行しておなじ地方に行はれることが多い。中国・四国に最有力だが、時には遥かに飛んだ地方にも行はれてゐる。けに[#「けに」に傍線]を経過して其まゝ「き」にな
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