]で、与へらる[#「与へらる」に傍線]を丁寧に言ふとたまはる[#「たまはる」に傍線]。かう言ふ又別の裏返しが、相応数対立した。其繁雑が、とゞのつまり二つあるものを、自ら廃して、一つにならせたり、一つでは久しい習慣が満足しないから二つ共残しておいて、其為気分以外に差別のないものにしてしまつたりする。「ます」「まする」もさう言ふ気分の満足だけにとゞまつて、実際の相違は消えてしまつてゐるもの、と言ふべきであらうか。
「まかり出でてすは」「案内を乞うてすは」の「て」は「……出で候は」「案内乞ひ候は」と言つても、ちつともさし支へのない連用助動詞の「て」なのだから、「まかり出です」「まかり出でそ」「まかり出でさう」など「候」の義のす[#「す」に傍線]・そ[#「そ」に傍線]・さう[#「さう」に傍線]などを「出で」にぢか[#「ぢか」に傍点]に附けても同じことである。「案内……」の場合も勿論おなじである。即、附随してゐるものをとり除けば、「出です」「乞ひす」で、「いきす」「見す」「為《シ》す」の部類に這入るのである。かう言ふ「す」は、凡対話敬語として早くから用ゐられてゐた訣なのだが、使用者は必しも、之を
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