勿論、同様の用法に遣はれてゐる「ます」もあるが、此が為に二つのます[#「ます」に傍線]が混乱してゐる訣ではない。それ/″\に、筋は立つてゐる。だが何処まで行つても二つのます[#「ます」に傍線]が二つともに、全然敬語系の「ます」ではなく、「申す」属の「ます」「ます・る」なのだ。
「でいする」が古風で、一方極端に著実にも聞えるやうに、「まする」も丁寧法の律義正直な感じを受けるのだらう。
ます[#「ます」は太字] まする[#「まする」は太字]
「申する」と「まする」との間に恐らくさうした関繋があるのだらう。ある時期の傾向として、さう言ふ方言めいてくど/\しく、卑屈にさへ聞える形が遣ひ出されたものであらう。さうして此が、極めて叮重に語り了せる終止形だと考へ、それが、如何にも丁寧感を深めることに満足したものであらう。即此で、「切口上」で、さうして完全に叮重感を盛ることになると言ふ気がしたのだらう。「てす」と「です」との間には、先に言つた誤解は出ないでもないが、大体、語根として、関繋はなかつた。「で」は「にて」であり、「て」は助動詞の又は其接続語化しようとしてゐたのに過ぎない。さうして其々、「す
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