る。さうして近代殊に、その出発点にあつた上品意識を深めて来るやうになつたらしい。
す[#「す」は太字]
近代初頭の端手・寛濶な生活を享楽した男女の社会から生れた、と言つても、間違ひのないのは、此「す」を語末に持つた一群である。其殊に目立つものが、右のあす[#「あす」に傍線]であつた。つまり、ある[#「ある」に傍線](或はあり[#「あり」に傍線])とす[#「す」に傍線]が、複合して、「あす」と言ふ様な形が出来、このあす[#「あす」に傍線]が、「で」を複合して「であす」、其からその重母韻がであす[#「であす」に傍線](>でやす)「でえす」「です」「でんす」を過程として、です[#「です」に傍線]・どす[#「どす」に傍線]・だす[#「だす」に傍線]など、相当反省的[#「反省的」に傍点]な音韻分化が行はれたものらしい。
このです[#「です」に傍線]分化の径路は、極めてごす[#「ごす」に傍線](ごんす)・がす[#「がす」に傍線](がんす)・げす[#「げす」に傍線]に似てゐる。標準語自負を持つた大都市相互の間、或はその一つ都会においてすら、言語|衒《テラ》ひする奴や、初期の歌舞妓衆の、自由過ぎた選
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