探偵小説思い出話
山本禾太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き](「ぷろふいる」一九四六年七月)
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 新青年ではじめて探偵小説の懸賞募集をやったのは昭和何年であったか、戦災による罹災で書籍や参考記録の一切を焼いてしまった私の手元では、今はっきりと判らないが、何でも枚数は五十枚、賞金は一等五百円であったかと思う。
 その時故人夢野久作さんの『押絵の奇蹟』と私の『窓』が当選した。この発表にさきだって応募作品全部の題名と作者の氏名が発表されたが、何でも応募総数は四百編位であったと思う。ところが、その応募者総覧のなかに私の氏名が見当らぬ。郵送の途中紛失したものか、或は編輯部でどこかにまぎれこんでしまったものか、私は作品に折角自信を持っていただけに残念でたまらず、直接編輯部へ書面で問合せたところ森下雨村氏から返事があって「貴作は優秀作として入選している、応募者総覧に漏したのは作品を名古屋在住の選者小酒井不木氏に送付後あの総覧を作ったので題名と、作者名が判らず出たら目の名で編輯を終ったものである」との返事に接
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