した。
 一等に相当する作品がなく夢野さんと私のものが何れも二等ということで賞金を半分ずつ貰ったと覚えている。私の『窓』がさきに選者の感想と共に発表された。江戸川乱歩氏が大変に私の作を支持して下さって相当の高点を与えて下さったが甲賀三郎氏がずいぶんシンラツで選者中一等点が辛かったと記憶している。甲賀氏と云えば氏と私に就て、も一つこれに似たことがあった。それは読売新聞で一五〇回の小説を懸賞募集したことがあり、それに応募した私の作品に対し選者白井喬二氏が相当の高点を与えて支持されたに反しやはり選者であった甲賀三郎氏の点が非常に辛かったため遂に落選の憂目を見たことがあった。私の『窓』に続いて翌月の「新青年」に夢野久作さんの『押絵の奇蹟』が載った。この作品を見たとき私は全く驚いてしまった。賞選作としては私の『窓』が第一席ということになっていたのであるが、私の作なぞとても足もとにも寄れぬ優れた作品で、その時すでに私は夢野さんが大作家の質を備えて居られることを感じ恐れをなした次第であった。次で「新青年」で同時当選した者として一度手紙でも出して見ようかと幾度も思ったのであったが、作品から受けた私の「
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