る平田内相報徳宗にかぶれ、神社を滅するは無税地を有税地となすの近道なりとて、もっとも合祀を励行されしという。いずくんぞ知らん、その報徳宗の元祖二宮氏は、田をむやみに多く開くよりは、少々の田を念入れて耕せ、と説きしにあらずや。たとい田畑開け国庫に収入増したりとて、国民元気を喪い、我利これ※[#「※」は「冒+ちから」、530−8]《つと》め、はなはだしきは千百年来の由緒あり、いずれも皇室に縁故ある諸神を祀れる神社を破壊、公売するより、見習うて不届き至極の破壊主義を思いつくようでは、国家に取りて何たる不祥事ぞ。
近ごろ英国高名の勢力家で、しばしば日本学会でわが公使、大使に対し聖上の御為《おんため》に乾盃を上ぐる役を勧めたる名士よりの来状にいわく、むかし外夷種がローマ帝国を支配するに及び、政略上よりキリスト教に改宗してローマ在来の宗教が偶像を祭るは罪深しとてこれを厳禁したのは、人民に親切でも何でもなく、実は古教の堂塔に蔵せる無数の財宝を奪うて官庫に充《み》てんがためなりし。よって古教亡びてまもなくローマ帝国の民元気沮喪し四分八裂して亡滅しぬ。露国もまた彼得《ペートル》帝以来不断西欧の文化を輸
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