令により一円ずつの科料を課せり。かくて前後七回遠路を召喚されしも、今に方つかずと、神社滅亡を喜悦するが例なるキリスト教徒すら、官公吏の亡状を厭うのあまり告げ来たれり。これらにて、合祀は民の和融を妨げ、加えて官衙の威信をみずから損傷するを知るべし。
第三、合祀は地方を衰微せしむ。従来地方の諸神社は、社殿と社地また多くはこれに伴う神林あり、あるいは神田あり。別に基本財産というべき金なくとも、氏子みな入費を支弁し、社殿の改修、祭典の用意をなし、何不足なく数百年を面白く経過し来たりしなり。今この不景気連年絶えざる時節に、何の急事にあらざるを、大急ぎで基本財産とか神社の設備とか神職の増俸とかを強いるは心得がたし。あるいは大逆徒出でてより、在朝者、神社を宏壮にし神職に威力を賦して思想界を取り締らしめんとて、さてこそ合祀を一層励行すといえど、本県ごとき神武帝の御古社を滅却したり、新宮中の諸古社をことごとく公売したりせるのちに、その地より六人という最多数の大逆徒を出せるを見る者、誰かその本末の顛倒に呆れざらん。また、只今ごとき無慙無義にして神社を潰して自分の俸給を上げんことのみ※[#「※」は「冒+力
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