の豕の鼻よく利《き》き、雉《きじ》、熟兎等をよく見付けたが野兎には利かなんだと。またいわく、野猪は群を成して共同に防禦する。ある人ヴェルモントの曠野で野猪の大群至って不安の様子なるを見るに、毎猪頭を外に向けて円を形成し、円の中心に猪子を置く。その時一つの狼種々に謀って、一猪を捉《とら》んと力《つと》めいた。その人その場を去って還り、往って見れば、猪群既に散じて狼は腹|割《さ》かれて死しいた。シュマルダが覩《み》た家猪の一群は、二狼に遇いてたちまち※[#「木+厥」、第3水準1−86−15]状《くつわじょう》の陣を作り鬣《たてがみ》を立て呻《うめ》いて静かに狼に近づく。一狼は遁れたが、今一つの狼は樹の幹に飛び上った。猪群来って中を取り囲むと、狼、群を飛び越ゆる。その時遅くかの時速く、たちまち猪に落され仕留められたと、これは欧州の家猪の高名だが、猪の類多くは一致共同して敵に勝つと見える。
南米にベッカリーという獣二種ありて、後足に三趾を具うるので前後足とも四趾ある東半球の猪属と異なり、また猪と違うて尾が外へ見《あら》われず、鹿や羊に近くその胃が複雑し居る(一九二〇年版『剣橋《ケンブリッジ》
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