の大間違いたるを悟った。その巻の十上にいわく、犬は鷹にも飼い人も食いしなり、『徒然草』に雅房大納言鷹に飼わんとて犬の足を切りたりと讒言《ざんげん》したる物語あり、『文談抄』に鷹の餌に鳥のなき時は犬を飼うなり。少し飼いて余肉を損ぜさせじとて生きながら犬の肉をそぐなり、後世も専らこれを聞きたりと見えて、『似我蜂《じがばち》物語』に江戸の近所の在郷へ公より鷹の餌に入るとて、犬を郷中へささ(課)れけるという物語あり。『続|山井《やまのい》』、
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鷹の峯のつち餌になるな犬桜 宗房
しゝ食うたむく犬は鷹の餌食《えじき》かな 勝興
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と。これでしし食うた報いの意が解けた。これに似た事、『中陵漫録』五に、唐人猪の尻の肉を切って食し、また本のごとく肉生ずれどもその肉硬くなりて宜《よろ》しからずとある。
いずれも無残な仕方だが、まだ酷《ひど》いのはアビシニア人が牛を生きながら食う法で、ブルースはかの国の屠者を暗殺者と呼んだ。モーセの制法を守る言い訳に、五、六滴を地に落した後《のち》屠者二人または三人は上牛の脊の上の上脊髓の両傍の皮を深く切り、肉と皮の
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