れなんだ。摩訶羅寺へ帰って羨ましくってならず、舎利弗に何卒|件《くだん》の呪願の文句を教えたまえと乞う。舎利弗この文句は常に用いてはならぬ、用いてよき時と悪い時とあるといったが、ひたすら伝授を望むから教えた。その後僧どもまた長者に招かれ順番で摩訶羅が上座となった。その時長者の手代渡海して珍宝を失い、長者の妻告訴されその児も死亡した。凶事のみ聚《あつ》まった日だったのに摩訶羅は頓著《とんじゃく》せず、舎利弗通り、願わくば今後常に、然らん事をと呪願した。長者これを聴いてこんな事が毎日続けとは怪しからぬと、大いに立腹して摩訶羅を叩き出す。摩訶羅困って国王の胡麻畠に入って苗を踏み砕き畠番人に打ち懲らさる。何故我を打つかと問うに、この通り胡麻畠を踏み荒したからと言われて初めて気付き、道を教えもろうて前進し麦を刈って積んだ処へ来た。その国俗として麦藁《むぎわら》を積んだ処を右に遶《めぐ》れば飲食をくれる、来年の豊作を祈るためだ。左に遶れば凶作を招くとて不吉とする。摩訶羅不注意にも左へ遶ったので麦畑の主また忿《いか》って打ち懲らす。何故我を打つかと問うと、知れた事、麦藁塚に遇わば多く入れ多く入れと豊
前へ
次へ
全69ページ中66ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング