及び公往きてこの客に謁す、また辞するに浴するを以てす、公戯れにその壁に題して曰く、〈君昔我を訪えば我沐浴す、我今君を訪えば君沐浴す、君昔我を訪いしは三月三、我今君を訪うは六月六〉と、けだし三月三日は仏を浴し六月六日は狗《いぬ》を浴する当時の風だったから、自分を仏と崇め、この客を狗と貶《けな》して嘲ったのだ。同書六に、侯白初めいまだ名を知られず本邑《ほんゆう》にあり、令宰初めて至り白すなわち謁す、知識にいいて曰く、白能く明府をして狗吠を作《な》さしむと、知識それはとてもならぬ事と言いて飲食を賭す、それから入りて謁すると知識門外よりこれを伺う、令宰白に何の用あって来たかと問うと、令公はいまだ知らぬがこの頃当地に盗人多いから、各家に狗を飼わせ吠えしめるが宜しいという。令曰くしからば我家にも能く吠ゆる犬を欲しいが手に入れてくれぬかと、白曰く家中新たに一群の狗ありてその声他の狗に異なりと、令それはどんな声かと尋ねると、白その声はこんなぞと※[#「口+幼」、第4水準2−3−74]々《ゆうゆう》と吠えて聞かせた。令曰く、君は好い狗の声を知らぬ。好い狗は※[#「口+幼」、第4水準2−3−74]々と吠え
前へ
次へ
全69ページ中56ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング