に代えて「田の真ん中の横棒が横につきぬけたもの」、第3水準1−85−1]《よこど》り去らる。家中の一白犬すこぶるよく馴《な》る。妻これに向って我聞く、犬の白きは前世人たりしと、汝|能《よ》く我を送り帰さんかと、犬|俯仰《ふぎょう》して命を聴くごとし、すなわち糧を包みこれに随う。警あればすなわち引きて草間に伏し、渇すればすなわち身を濡《ぬ》らして返り飲ましむ。およそ六、七日で賊境を出で、その夫|恙《つつが》なきに会う。朝廷崇信県君に封ずとあるは犬が封号を得たらしい。また唐の貞元中大理評事韓生の駿馬が、毎日|櫪中《れきちゅう》で汗かき喘《あえ》ぐ事遠方へ行きて疲れ極まるごとき故、圉卒《ぎょそつ》が怪しんで廐舎に臥し窺うと、韓生が飼った黒犬が来って吼《ほ》え躍り、俄に衣冠甚だ黒い大男に化け、その馬に乗って高い垣を躍り越えて去った。次いで還り来って廐に入り、鞍《くら》を解いてまた吼え躍るとたちまち犬になった。圉人驚異したが敢えて洩《も》らさず、その後また事あったので、雨後のこと故圉人が馬の足跡をつけ行くと、南方十余里の一古墓の前まで足跡あり。因って茅《かや》の小屋を結び帰り、夕方にその内に入り
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