を取り読み米を負うて還らしむ。数月かくし続けて主人一族を餓えざらしめた。数年後|斃《たお》れて別墅の南に葬られ、中舎の孫が石を刻してその墓を表わし霊犬誌といったとある。
インドのマラバル海岸のクイーロン港口の築地に石碑あり。ゴルドン大佐てふ英人この辺の湖で泳ぎいると犬吠えてやまず。気を付けて視ると、湖の底に大きな物が徐《しず》かに自分の方へ近づき来り、その水上に小波《さざなみ》立つ。さては※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]《わに》の襲来と悟ると同時に犬水中に飛び入り食われて死んだ。いくら吠えても主人が悟らぬ故自ら身代りに立ったと知り、哀悼の余りこの碑を立てた。この大佐は一八三四年ボンベイで死んだとあるから余り古い事でない。またデルフトに、蘭王ウィルヘルム一世の碑ありてその愛犬像を碑下に置く。これは一五七二年スペインより刺客来て天幕中に臥した王を殺しに掛かった時、その蒲団を咬み裂き吠えて変を告げ、難に及ばしめなんだ大功あるものと伝えられる(『ノーツ・エンド・キーリス』十一輯四巻四九頁、同三巻四一頁)。
欧州で、死人の墓碑に犬の像を具する例甚だ多いが、必ず
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