《と》く見分くるようなもので、大いに研究を要する事だ。それから『大清一統志』三五五、〈意太利亜《イタリア》の哥而西加《コルシカ》に三十三城あり、犬の能く戦うを産す、一犬一騎に当るべし、その国陣を布くに、毎騎一犬を間《まじ》う、反《かえ》って騎の犬に如《し》かざるものあり〉。その頃の西洋地理書から訳出したものらしいが、欧州の博識連へ聞き合したるも今に所拠が知れぬ。御存知の方は教示を吝《おし》むなかれ。
 陶淵明の『捜神後記』上にいわく、会稽句章の民、張然、滞役して都にあり、年を経て帰り得ず、家に少婦ありついに奴と私通す、然都にありて一狗を養うに甚だ快し、烏竜と名づく、のち仮に帰る、奴、婦と然を謀殺せんと欲す、飯食を作り共に下に坐し食う。いまだ※[#「口+敢」、第3水準1−15−19]《く》うを得ず、奴戸に当り倚《よ》って弓を張り箭《や》を挟み刀を抜く、然、盤中の肉飯を以て狗に与うるに狗※[#「口+敢」、第3水準1−15−19]わず、ただ睛《ひとみ》を注ぎ唇を舐《ねぶ》り奴を視《み》る、然、またこれを覚る、奴食を催す転《うた》た急なり、然、計を決し髀《もも》を拍《う》ち大いに喚《よ》んで烏
前へ 次へ
全69ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング