、女の子は入らぬ元の所へ戻し入れておくれといったは面白いというと、古文家ボッジュが、緬羊児を買いてその尾に山羊児の尾を接《つ》いだというのがあって一層面白いという(ここ脱文ありと見え意義多少分らず)、アスクレピアデスは、牝鶏よく卵を生むと見せるため、その肛門に卵を入れ置いたをある女が買ったが、爾後一向卵を産まなんだと語る所がある。
西鶴の『一代男』二、「旅の出来心」の条、江尻の宿女せし者の話に「また冬の夜は寝道具を貸すようにして貸さず、庭鳥のとまり竹に湯を仕掛けて、夜深《よぶか》に鳴かせて夢|覚《さ》まさせて追い出し、色々つらく当りぬるその報いいかばかり、今|遁《のが》れてのありがたさよ云々」。この湯仕掛けで鶏を早鳴《はやなき》せしむる法は中国書にもあったと記憶する。木曾の松本平の倉科《くらしな》様ちゅう長者が、都へ宝|競《くら》べにとて、あまたの財宝を馬に積んで木曾街道を上り、妻籠《つまご》の宿に泊った晩、三人の強盗、途中でその宝を奪おうと企て、その中一名は宿屋に入って鶏の足を暖め、夜更《よふけ》に時を作らせて、まだ暗い中に出立させた。長者が馬籠《まごめ》峠の小路に掛かり、字《あざ
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