志』二二四)。
 諸国あまねく白鶏を殊勝の物としたのだ。[#地から2字上げ](大正十年二月、『太陽』二七ノ二)

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『甲子夜話』続一七にいわく、ある老人耳聞えず、常に子孫に小言をいう。ある日客ありし時に子供を顧みて物語るは、今時の者はどうも不性なり。我らが若き時はかようにはなしという時、飼い置きし鶏|側《かたわら》より時をつくる。老人いわく、あれ聞きたまえ人ばかりでなし、鶏さえ今時は羽敲《はばた》きばかりして鳴きはしませぬと。かかる話は毎度繰り返さるるもので、数年前井上馨侯耳聾して、浄瑠璃語りの声段々昔より低くなった、今の鶏もしかりと呟《つぶや》いたと新紙で読んだ。またいわく、ある侍今日は殊に日和《ひより》よしとて田舎へ遊山《ゆさん》に行き、先にて自然薯《じねんじょ》を貰《もら》い、僕《しもべ》に持せて還る中途|鳶《とび》に攫《つか》み去らる、僕主に告ぐ、油揚《あぶらあげ》ならば鳶も取るべきに、薯《いも》は何にもなるまじと言えば、鳶、樹梢で鳴いてヒイトロロ[#「トロロ」に白丸傍点]、ヒイトロロ[#「トロロ」に白丸傍点]。一八九一年オックスフォード板、コドリングトンの『
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