《ちょうき》合掌し、釈迦如来涅槃に臨んで大迦葉に付嘱した法衣を持って弥勒仏に授け奉る。釈迦の身長は一丈八尺とか、その法衣が弥勒仏の両指をわずかに掩《おお》うはずと土宜法竜僧正から承った。さればこの時諸大衆今日この山頂に人頭の小虫|醜陋《しゅうろう》なるが僧服を著て世尊を礼拝するは珍なものだと嘲ると、弥勒世尊一同に向い、孔雀好色あれど鷹、鶻鷂《こつよう》に食われ、白象無量の力あるを、獅子獣小さしといえども撮《と》り食らう事|塵土《じんど》のごとし、大竜身無量にして金翅鳥《こんじちょう》に搏《う》たる、人身長大にして、肥白端正に好しといえども、七宝の瓶《かめ》に糞を盛り、汚穢《おわい》堪うべからず、この人短小といえども、智慧錬金のごとく、煩悩の習久しく尽き、生死苦余すなし、護法の故にここに住み、常に頭陀事《ずだじ》を行う。天人中最も勝《すぐ》れ、苦行与等なし、牟尼両足尊、遣わし来って我所に至る。汝らまさに一心に、合掌して恭《うやうや》しく敬礼すべしと偈《げ》を説き、釈迦牟尼世尊五濁の悪世に衆生を教化《きょうけ》した時、千二百五十弟子の中で頭陀第一、身体金色で、金色の美婦を捨て、出家学道昼夜
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