紀談』に、池田輝政、武士の重宝とすべきは領分の百姓と譜代の士と鶏と三品なり。そを如何と言うに、百姓は田畑を作りて我上下の諸卒を養う、これ一の重宝なり。譜代の士たとえ気に応ぜずして扶持を放すといえども、敵国にてかの者を扶持放たると思わずして間《かん》にも入るるかと思うて疑う故、敵国に逗留する事能わずしてついには我国へ帰りわが兵となる故これ二の宝なり。また目に見ゆる合図、耳に聞ゆる相図は敵の耳目に掛かる故|容易《たやす》く敵国にて成しがたし、鶏鳴は誰もその相図ぞと知らざる故に、すなわち敵国の鶏鳴にて一番鳥にて人衆を起し、二番鳥にて食い、三番鳥にて立つなどと相図を極めて敵もその相図を知らざるの徳あり、これを三の重宝と立てしなりと宣《のたも》うと見え、吉田久左衛門陣中に鶏を飼いしを、時を知るべき心掛け奇特なりとて、家康が感じた由『備前老人物語』に見える。時計始めて渡来した時これを鶏の時を報ずるに比べて明人《みんじん》が時鶏と書いたは、北斗の形した針が時を指し自ずから鳴いて人に知らす事鶏のごとくなる故と白石先生の『東雅』に出づ。慶安元年板『千句独吟之俳諧』には「枕上の時鶏に夢を醒《さま》されて」
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