言い張る。私陀固くその身に※[#「王+占」、第4水準2−80−66]《あやまち》なきを知るから、進んで身を火中に投ぜしも焼けず。他にも種々その潔白を証したが、なお全く夫王の嫉妬を除く能わず、私陀は「熱い目を私陀のも私陀で無駄になり」で、今は絶望の余り自分が生まれ出た大地に向い、わが節操かつて汚れし事なくんば、汝、我が足下に開いてわれを呑めと願うに応じ、土たちまち裂けて私陀を呑みおわった。羅摩これを見て大いに悔い、二子にその国を頒《わか》ち、恒河の辺《あたり》に隠栖《いんせい》修道して死んだというのが一伝で、他に色々と異伝がある。
この譚に対して欧人間にも非難少なからず、われわれ日本人から攷《かんが》えても如何な儀も多いが、かかる事はむやみに自我に執して他を排すべきにあらず。たとえば欧州やインドの人は蟾蜍(ヒキガエル)を醜かつ大毒なる物として酷《ひど》く嫌う。しかるに吾輩を始め日本人中にこれを愛する者少なからず。アメリカインデアン人もまたしかり。モニエル・ウィリヤムスの『印度《ヒンズー》教篇』に、蛇は大抵の民族が甚《ひど》く忌むものながら、インド人はほとんど持って生まれたように心底から
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