仆《たお》れて慟哭《どうこく》これを久しゅうしたが、かくてやむべきにあらざれば、何とか私陀を取り返さんと尋ね行く途上、猴王スグリヴァ、その児ヴァリと領地を争い戦うを見、そのためにヴァリを殺す。猴王大いに悦び力を尽して羅摩を助く。羅摩誰かを楞伽《りょうが》に使わし、敵情を探らんと思えど海を隔てたれば事|容易《たやす》からず。この時スグリヴァ猴王の軍を督せしハヌマン、身体極めて軽捷《けいしょう》で、たちまち海上を歩んでかの島に到り、千万苦労してようやく私陀が樹蔭に身の成り行きを歎くを見、また、その貞操を変ぜず、夫を慕い鬼王を詈《ののし》るを聴き、急ぎ返って羅摩に報じ、その請に応じて、山嶽、大巌を抜き、自分の身上にあるだけの無数の石を担《かか》げて幾回となく海浜に積み、ついに大陸と島地の間に架《か》け渡した。羅摩すなわち猴軍を先に立て、熊軍をこれに次がせて、新たに成った地峡を通り、楞伽城を攻め、勝敗多回なりしもついに敵を破って鬼王を誅《ちゅう》し、私陀を取り戻し、故郷へ帰った。
竜樹菩薩の『大智度論』二三に問うて曰く、人あり無常の事至るをみ、転《うた》た更に堅く著す、国王夫人たる宝女地中よ
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