正后カウサリアに生ませた子で、初め林中に瞿曇仙に師事した時、上に述べた通りこの仙人その妻アハリアの不貞を怒り、詛うて石に化しあったのを羅摩足で触れて本形に復せしめた。それからミチラ国王ジャナカを訪《おとな》い、シワ神が持った弓あっていずれの国王もこれを彎《ひ》き得ずと聞き、容易《たやす》くその弓を彎き、その賞として王女私陀(シタ)を娶《めと》ったところを、父王より呼び還され政務を譲らる。一日弓を彎いた弦音《つるおと》以てのほか響いて側《かたわら》にあった姙婦を驚かせ流産せしめ、その夫の梵士怒って、爾今《じこん》、羅摩、庸人《ようじん》になれと詛う。それより羅摩生来の神智を喪う。その後ほどなく父王の第四妃その生むところの子を王に嗣《つ》ぎ立てしめんとて、切に羅摩に退位を勧め、羅摩承諾して、弟、羅史那(ラクシュマナ)と自分の妻私陀を伴い林中に隠る。一日羅摩の不在中、羅史那スルパナカの両耳を切り去る。これは楞伽(ランカ、今のセイロン)の鬼王羅摩泥(ラーヴァナ)とて、身体極めて長大に十の頭ある怪物の妹なり。羅摩泥、妹がために返報せんと、私陀を掠《かす》め去る。羅摩帰って妻を奪われしと知り、地に
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