兎に似て短く、高樹上に棲息し、風を候《うかご》うて吹かれて他樹に至りその果を食う。その尿乳のごとく甚だ得がたし、諸風を治すと。明の李時珍諸書を考纂していわく、その獣嶺南および蜀西山林中に生ず、状《かたち》は猿猴のごとくで小さし、目赤く尾短くてなきごとく青黄にして黒し、昼は動かず、夜は風に因って甚《いと》捷く騰躍し巌を越え樹を過ぎて鳥の飛ぶごとし、人を見れば羞《は》じて叩頭《こうとう》憐みを乞う態のごとし、これを打てばたちまち死す、口を以て風に向えば復活す、その脳を破りその骨を砕けばすなわち死すと。
[#「第3図 飛狐猴」のキャプション付きの図(fig2539_03.png)入る]
漢の東方朔の『十洲記』には南海中の炎洲に風生獣あり、豹に似て青色、大きさ狸(野猫)のごとし、網で捕えて薪《まき》数車を積み焼くに、薪尽きても燃えず灰中に立ち毛も焦げず、斫《き》っても刺しても入らず、打てば灰嚢のごとし、鉄槌《かなづち》で数十度打ってようやく死ねど、口を張って風に向ければ暫くして復《また》活《い》く、石菖蒲でその鼻を塞《ふさ》げば即死す。その脳を菊花に和し十斤を服せば五百年生き得と。唐の孟※[
前へ
次へ
全159ページ中33ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング