のみ》に咋《く》わるる事極めて稀《まれ》だ。そは猴ども互いにしばしば毛を探り合うからだが、それにしても猴が毛を探って何か取り食うは多くは蚤でなくて、時々皮膚の細孔から出る鹹《から》き排出物の細塊であると。ただし虱の事を書いていないは物足らぬ。この話で思い出したは享保二十年板|其碩《きせき》の『渡世身持談義』五、有徳上人の語に「しからばあまねく情知りの太夫と名を顕《あら》わさんがために身上《みあが》りしての間夫狂《まぶぐる》いとや、さもあらば親方も遣《や》り手も商い事の方便と合点して、強《あなが》ちに間夫をせき客の吟味はせまじき事なるに、様々の折檻《せっかん》を加うるはこれいかに、その上三ヶ津を始め諸国の色里に深間《ふかま》の男と廓《くるわ》を去り、また浮名立ててもその間夫の事思い切らぬ故に、年季の中にまた遠国の色里《いろざと》へ売りてやられ、あるいは廓より茶屋|風呂屋《ふろや》の猿と変じて垢《あか》を掻《か》いて名を流す女郎あり、これ皆町の息子親の呼んで当てがう女房を嫌い、傾城《けいせい》に泥《なず》みて勘当受け、跡職《あとしき》を得取らずして紙子《かみこ》一重の境界となる類《たぐ》い
前へ 次へ
全159ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南方 熊楠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング