社旧跡を滅却し神林を濫伐して売り飛ばせてテラを取り、甚だしきは往古至尊上法皇が奉幣し、国司地方官が敬礼した諸社を破壊し神殿を路傍に棄て晒《さら》した。熊楠諸国を遍歴して深く一|塵《じん》一|屑《せつ》をも破壊するてふ事の甚だ一国一個人の気質品性を損するを知り、昼夜奔走苦労してその筋へ進言し、議会でも弁じもらい、ついに囹圄《れいご》に執《とら》わるるに至って悔いず。しかるにその言少しも用いられず。不祥至極の事件の関係者が合祀励行の最も甚だしかった地方から出た。神社合祀が容易ならぬ成り行きを来すべきは当時熊楠が繰り返し予言したところなるに、その讖《しん》ついに成りしはわれも人もことごとく悲しむべきである。鄭《てい》に賢人ありて鄭国滅びたるは賢人の言を聞きながら少しも用いなんだからと、室鳩巣《むろきゅうそう》が言ったも思い当る。それにサアどうだ。有司が前陣に立って勧めた薬が利《き》き廻って今日ドサクサするに及び、ヤレ汽車賃を割引するから参宮に出掛けよとか、ソラ国費を以て某々の社を廓大しようとか大騒ぎに及ぶは既に手後れの至りで、汝の罪汝に報う「世の中の、うさには神もなき物を、心のどけく何祈るら
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