攷《かんが》え合すべし。介が動物を挟み困《くる》しめた記事は例の『戦国策』の鷸蚌《いつぼう》の故事もっとも顕われ、其碩《きせき》の『国姓爺《こくせんや》明朝太平記』二の一章に、旅人が乗馬して海人《あま》に赤貝を買い取って見る拍子にその貝馬の下顎《したあご》に咋《く》い付き大いに困らす。下人祝してお前は長崎丸山の出島屋万六とて女郎屋の一番名高い轡《くつわ》、その轡へ新しい上赤貝の女郎が思い付いて招かぬに独り食い付くと申す前表《ぜんぴょう》と悦ばす所あるはこれに拠って作ったのだ。その他『甲子夜話』一七に、平戸《ひらど》の海浜で猴がアワビを採るとて手を締められ岩に挟まり動く能わず、作事奉行《さくじぶぎょう》川上某を招く故行って離しやると、両手を地に付け平伏して去ったとあるが、礼に何も持って来たとないところがかえって事実譚らしく、九世紀に支那に渡ったペルシャ人アブ・ザイド・アル・ハッサンの『紀行』(レイノー仏訳、一八四五年板一五〇頁)にも、狐が介の開けるを見、その肉を食わんと喙《くちばし》を突っ込んで緊《きび》しく締められ、顛倒して悶死した処へ往き会わせたアラビア人が介の口に何か光るを見、破っ
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