た畚(フゴ)の中にかの村名産のタチガイ多く入れあった。これは『本草啓蒙』四二にタイラギ、トリガイ(備前、同名あり)、タテガイ(加州)と異名を挙げ、「海中に産す、形蚌のごとくにして大なり、殻薄くして砕けやすく色黒し、挙げて日に映ずれば微《すこ》しく透いて緑色なり。長さ一尺余、一頭は尖《とが》り一頭は漸《ようや》く広く五、六寸ばかり、摺扇《しょうせん》を微しく開く状のごとし、肉の中央に一の肉柱あり、色白くして円に、径《わた》り一寸ばかり、大なるものは数寸に至る。横に切って薄片と成さば団扇の形のごとし、故に江戸にてダンセンと呼び炙《しゃ》食|烹《ほう》食味極めて甘美なり。これ江瑶柱なり、ほかにも三柱ありて合せて四柱なれども皆小にして食うに堪えず、故に宋の劉子※[#「栩のつくり/軍」、第3水準1−90−33]「食蠣房詩」に江瑶貴一柱といえり、その肉は腥靭《せいじん》にして食うべからず、※[#「魚+二点しんにょう+豕」、第3水準1−94−49]※[#「魚+夷」、第3水準1−94−41]《ちくい》「塩辛《しおから》」に製すればやや食うべし、備前および紀州の人この介《かい》化して鳥となるといい、試み
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